衣服になる前の「布」に着目し、それぞれの特徴を理解する

ファッションに興味がある人は、衣服のデザインにまず関心が向くのではないかと思います。でもそのデザインは、素材となる布があってはじめて可能となるもの。衣服の質感や手触り、保温性や吸湿性など、デザインから着心地にいたるまでそのバリエーションは布の開発・改善によって支えられてきました。この授業ではそんな衣服になる前の各種織物の力学的・物理学特性を、実験を通して理解していきます。 力学や物理というと難しく聞こえますが、さまざまな実験装置を使って布の性質をひとつずつ測定することで、素材の特徴を知り試験方法を学ぶことを目的としています。JIS(日本工業規格)の試験法などに基づいており、織物企業や研究所でも行われている実践的な内容です。

布の特性を知ることは、理想のデザインの実現につながる

授業は4〜5人のグループで行いますが、全員が装置を扱えるように配分しています。ウールと綿のように材料の異なる布を試料として取り上げ、構造(織り方)を把握した上で、強度、曲がり方、ドレープ性、通気性や吸湿性などを試験します。ドレープ性は布のひだの美しさを左右するもので、布を垂らしたり回転させたりして測定します。また通気性は、試料に圧力をかけて空気を送り、どの程度空気が流れたかを数値で割り出します。結果が数値として現れるため、目で見たり手で触れただけではわからない布の特性を納得感をもって理解することができます。またこれらの結果は、理想のデザインを実現させるためにはどういった布が必要なのかという研究や開発に必要不可欠なものでもあります。

授業は布の奥深さを知るための入り口。そこから新しい可能性を拓く。

本当に布のことを理解するためにはありとあらゆる素材を使い、コツコツと丁寧に、誠実に試験を続けることが大切です。この授業で行うことは、布の性質を知るためのほんの入り口にすぎません。しかし、それは大切な一歩です。例えば木綿とウールの布を比較すると、布綿の方がしわになりやすいことがわかります。その原因は素材だったり織り方だったりとさまざまですが、その知識は布の開発だけでなく、デザインや販売の仕事に生かすことはじゅうぶんに考えられます。お客様に似合う服を選びながら、素材の特徴から洗濯の仕方、たたみ方、布にあった日々の手入れなど適切なアドバイスができますし、自分自身、いいものを選び愛着を持って長く着続けることができるようになります。各種試験を通して織物の奥深さを発見し、新しい可能性を引き出す目を養ってもらえればと思います。

生活科学部 生活環境デザイン学科 井上 尚子 准教授

椙山は、
アパレル分野で長い歴史を持つ大学。
伝統に裏打ちされた環境で学び、就職する

生活科学部 生活環境デザイン学科 井上 尚子 准教授

学科では1年次の授業に繊維材料学があり、布の材料となる繊維や糸について学びます。この授業はそれをさらに進めたもので、繊維や糸の構造物である織物について理解を深めていきます。普段から身近で何気なく使っている布ですが、試験を通して一つひとつ見直すことで小さいけれど確実な発見を得ることができるので、それを日常生活で思い出し、役立ててほしいですね。また大学の学びがきっかけとなり、繊維製品の品質をチェックする検査協会に就職し、経験を重ねる卒業生もいます。もともと椙山女学園大学はアパレル分野の歴史が古く、伝統があり多くの卒業生を輩出しています。家庭科の教員養成にも力を入れているので、ファッションだけでなく被服や家政に興味がある方は、ぜひ一度ご覧ください。

※2019年度実施授業