文化情報学科

コミュニティデザイン論

人と人を縁で結び
やる気を引き出す。
それがコミュニティデザインの本質。

コミュニティデザインは、人の「縁」を結ぶことからはじまる

「コミュニティデザイン」という言葉を、今まで一度は聞いたことがあると思います。でも「具体的に何をするの?」といわれると、首を傾げてしまいませんか? それもそのはず、「コミュニティ」の「デザイン」は普段目にするデザインとは異なり、「これ!」という正解が見えづらいのです。例えば、地域の公園を人でいっぱいにしたいと考えたとき、公園をきれいにリニューアルするだけで人は集まるでしょうか。そうはなりませんね。なぜなら無縁社会といわれる現代では、用もない公園に知らない人同士が集まるなんてことは滅多にないからです。過疎地や市街地でも同じで、人々の間につながりがなければ何も生まれません。必要なものは「縁」です。縁があれば人は寄り合い、賑わいが生まれます。その縁をつくることがコミュニティデザイナーの役割なのです。

事例研究を通してポイントをつかみ、実際に挑戦する

授業ではまず、実際の事例を知るところからはじめます。新潟県の事例では、文化財に指定されている建物の活用方法を考えるにあたり、学生がアイデアを発表するだけでなく地元の人々に働きかけてイベントを開催しました。カフェや竹細工によるライトアップなど、地元住民を傍観者にせず巻き込んで一緒に動いたことで縁が生まれ、イベントは成功。そのような事例をいくつか紹介し、ポイントをつかんだところで今度は自分たちがコミュニティデザインを行う方法を考えます。取り上げるのは、実際に存在する公園や星が丘テラスの広場。まずは現地を視察して問題点を見つけ、グループで改善点を話し合います。次にどんな場所にしたいかコンセプトを考え、そのために何をどうすればいいか計画します。イベントを開催するのであれば、プログラムや1日のスケジュール、必要な機材を調達するための経費計算、図面を広げて電源の場所を確認しての設営計画など、かなり綿密に考えます。

グループワークを通し、ファシリテーション技術を身に付ける

ただ、やみくもに考えるだけでは空回りしてしまいます。グループワークでアイデアを出し、まとめ上げるには技術が必要。例えば人前で話をすることが苦手な人も意見が表明できるよう、考えたことを付箋に書き、それを出し合うやり方も技術のひとつです。グループワーク形式で授業を行うのは、そういったファシリテーションや発想の技術を学ぶためでもあります。どう働きかければ発言しやすいか、バラバラなアイデアをどうやってひとつのコンセプトにするか、その効率的な方法を知っていれば、自分自身がまちをよくしたいと考えたとき、周囲を引き込んで動くことができるようになります。まちづくりに限らず、PTAだったり、町内会だったりするかもしれません。授業での経験を通して、将来それぞれの場でコミュニティデザインを実践する力を培うこと。これがこの授業の到達点だと考えています。

文化情報学部 文化情報学科 今村 洋一 准教授

周囲のやる気を引き出しながら、目的に向かって進む。
そんなリーダーシップを身に付けてほしい。

文化情報学部 文化情報学科 今村 洋一 准教授

コミュニティデザインやまちづくりにかかわる職業には公務員がありますが、職業ではなく日常生活の中でこそ、この技術を生かしてほしいと思っています。例えば、自分の部屋は自分で掃除をしますし、自分の家は家族が掃除をしますよね。では、自分のまちはどうでしょう。他人に任せきりになっていないでしょうか。まちを良くするために行政の力は必要ですが、最終的に住民自身が動かなければ本当に住み良いまちにはなりません。そしてそのきっかけは、案外身近にあるものです。 まちづくりには「微妙な」リーダーシップが必要です。自分でガンガン進めるのではなく、人に動いてもらって「自分もそれについていきます」という弱いリーダーシップ。いつの間にかみんながやる気を出し、向かうべき方向に向かっているというタイプです。これができる人は本当の人格者。そしてこれは、就職活動の集団面接や仕事でも同じです。相手の言いたいことを想像し、相手の話を聴きながら目的に向かって行動する。大学生活を通して、それが実践できる人になってもらえれば嬉しいです。

※この記事は、2019年度の授業内容を取材したものです。