メディア情報学科
編集デザイン
「編集する」とは、どういうことか。
デザインの実践を通して
理解する。
「情報ありき」で論理的な編集デザイン
技術の進歩によって、私たちはパソコンソフトなどのツールを利用して自分の伝えたいことを表現することが容易にできるようになりました。「編集デザイン」は、世の中にある沢山の表現手段のうちでも、主にポスターや冊子などの紙媒体で行うデザインを通じて、情報を編集することを学ぶ授業です。1年次、2年次に学習したメディアに関わる理論をベースに、名刺、ネームタグ、ポスターなどの作成を行い、ポートフォリオ(作品集)としてまとめることをめざします。
今日の授業は、Macのパソコンが揃った演習室で、名刺のデザインに挑みます。担当教員の宮下十有先生は、名刺を手渡すシチュエーションとはどのような場面か、自分を表現する方法にはどのような種類があるか、表現したい情報はどのように配置したら効果的かなどの様々なレイヤーで「情報をどう伝えるか」を想定し、要素をまとめ、よりよいレイアウトになるよう、論理的な理解から実践へ導いていきます。

集めた情報をいかに紙面上に再構築するか
名刺は、主にAdobe社製ソフトのIllustratorを使用してレイアウトします。多くの学生にとっては初めて扱うソフトのため、隣りの受講生に操作を尋ねたり、宮下先生にアドバイスを求めたりと、試行錯誤しながら作業を進めている様子です。しかし、この授業の主目的は、パソコンスキルを磨くことではありません。今回の名刺づくりであれば、「限られたスペースを使って自分を表現する」ためには何が必要かを分析し、情報を集めて紙面上に再構築する力の習得をめざします。そのため、宮下先生は著名な作品や身近な印刷物を観察・評価して、デザインがどのように作られているのかを考える「考察」の視点も伝えながら、制作を指導していきます。
なお、名刺はビジネス用、プライベート用、スペシャルバージョンの3案をデザイン。学生たちは、さまざまな方向性でレイアウトを仕上げ、クライアントを想定した提案までの一連の作業を経験しました。

普遍的に使えるクリエイティブ力を磨く
「編集デザイン」の授業では例年、ACC(愛知県児童総合センター)とコラボレーションした制作にも挑んでいます。たとえば、「“自分にとって、なんだかうれしいこと”ってなんだろう?」というテーマを掲げた年度では、その瞬間を画像として切り取り、学生全員の「うれしいこと」を集めてパネルにデザインしました。制作過程では、過去の展示や作品の分析を経て、取材によって情報や素材を集め、自分の思いを伝えられるレイアウトでまとめる編集の流れを経験。また、作品を通して表現した自分の思いがACCを訪れる親子に共感を持って受け入れられる体験は、デザインが社会参加や地域連携につながっていることを理解する貴重な機会となりました。
多くの創作活動を通して、情報のまとめ方と表現方法を学ぶ「編集デザイン」。情報メディアが目覚ましく進化する過程で使用するツールが変わったとしても、未来に渡って応用できる根幹的なクリエイティブ力を身につけることが、この授業の目標です。


※この記事は、2018年度の授業内容を取材したものです。