看護学科
在宅看護支援論演習
自宅での療養を助ける
在宅看護では、
信頼関係と相手への
深い理解が不可欠。
患者さんの能力を生かせるかどうかは、まわりのサポート次第
在宅看護とは、患者さんが暮らす居宅を訪問し、看護を行うことです。在宅療養を行う際に起こる問題や不自由さの解消を目的としており、生活と密着しているため、患者さん自身の背景を知り、理解するところから始めなければいけません。授業では難病患者さんの事例を取り上げ、どんなケアが必要かを考えて訪問看護の方針を検討します。グループワークで行いますが、学生には必ず、患者さんの視点に立って物事を考えることが大切であると伝えます。患者さんに問題行動があるなら、なぜその行動をとるのか。患者さんはどう考え、何を望んでいるのか。そして患者さんができることを看護師自身が「できない」と思いこみ、能力をつぶしてしまってはいないか。患者さんの能力を生かすも殺すも、まわりのサポート次第なのです。

広い視点で相手の立場に立ち、提供できるケアの選択肢を増やす
グループワークでは、患者さんが自宅で最期を迎えたいと願う理由は何か、本人に確認する必要はあるか、患者さんの願いを叶えるために家族にどう説明するか等々、さまざまな意見が出されます。しかし、それぞれに正解・不正解はありません。相手の背景を想像して考え、自分の言葉で表現することで、患者さんの要望を受容する心構えを持ち、要望にこたえられる選択肢を増やすことが授業の目的のひとつです。そして居宅のある地域にはどんな社会支援があり、どんな公的サービスを利用できるかを知っておくことも必要。訪問看護先では予想しない出来事が起こることもあり、限られた時間のなかで臨機応変な対応が求められます。「相手の視点で広く物事を考える力」は現場での判断を助け、よりよい看護を提供する手助けとなってくれるでしょう。

信頼関係をベースに、総合的に判断して対応する
病棟では病院という管理された場所に患者さんが来てくれますが、在宅看護では看護師が患者さんの自宅へ伺う側となります。自宅は患者さんのフィールドであり、そこで看護師は患者さんや家族が納得できるよう説明し、看護を行う必要があります。信頼関係が看護のベースとなるため、授業では家に上げてもらうときの訪問マナーや、自宅での目線の合わせ方なども勉強します。また家族との接点が濃く、患者さんと家族の間に入り橋渡しをする機会が多くなるのも在宅看護の特徴。患者さんが亡くなった後も視野に入れ、前もって対応を考えて寄り添うこと、また患者さんを看ると同時に、家族や介護士に無理が生じていないか見渡し、総合的に判断し対処することも大切です。このように在宅医療における看護師の役割は多岐にわたり、それだけに期待が寄せられる分野でもあります。


※この記事は、2019年度の授業内容を取材したものです。