看護学科
母性看護学概論
変化する社会の中で
母と子、その家族が
健康に、そして幸せに
過ごせるよう支援する。
女性の心身を知り、母子と家族が健康に生きるサポートをする
女性の心や体は思春期ごろからダイナミックに変化します。それをふまえ、この授業では女性が母親として子どもを産み、育てるとはどういうことか、母子と家族が健康に過ごすには何が必要かについて学び、理解を深めます。内容は、月経に代表される女性特有の周期的なライフサイクルと生殖機能、出産前後の母体の変化と胎児の発育、誕生した赤ちゃんの体に起こるさまざまな生理現象など。これらは基本的な知識ですが、大学の4年間でこれらを「使える知識」へと展開させます。そのため、「概論」を土台に「支援論」で看護の方法を学び、3年次の「演習」を経て現場での「実習」へつなげる、この積み重ねのなかで学びを深めていきます。これは他の科目でも同じ。そこに体の仕組みや機能、薬理などの知識が加わり、必要に応じ使いこなすことができてはじめて看護師としての専門性が生まれるのです。

子どもを産むと、自分自身の社会的役割が変化する
母性看護では女性の身体的側面のほか、心理的側面、そして母子と家族をめぐる社会的側面も重要です。看護はもともと体の不調や死に対する恐怖・悲しみなど、情動的な面との関わりが深い分野ですが、母性看護ではそれらに加え「子どもを産むことによる役割の変化」への対応が求められます。ひとりの個人として存在していた女性が、子どもを産むことで「◯◯ちゃんのママ」と呼ばれるようになる。母や父になることで、社会が自分を見る目が変わるのです。ここに家族がどうかかわるかによっても変化への対応力が変わります。そのため、家族のあり方は重要な要素。特に女性の生き方は社会変化から大きく影響を受けるので、社会全般に目を向けて理解する必要があります。

社会変化が女性に与える影響と、看護師の役割
大家族の時代、子育ては家族みんなで担っていましたが、女性の権利意識は低いものでした。今の女性は昔より自由になりましたが、核家族で子育ての負担が母親に重くのしかかっています。それに対して海外では、母子と家族を切れ目なくする支援拠点を自治体が整備する「ネウボラ」という取り組みがスタートし、1990年代には世界的に「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)」の考え方が明確化されました。SRHRを簡単にいうと、性や子どもを産むことに対して心身および社会が良好な状態であること、そして自分の意思が尊重され、自分の身体に関して自分自身で決められる権利のことです。これは母性看護の現場で重視されており、授業でも必ず取り上げます。時代とともに権利意識や法律は変わりますが、その変遷を学ぶことで女性の権利とは具体的に何なのか、なぜ女性に教育が必要なのかを理解します。そして、その中で看護師にはどんな役割があるのか、学生一人ひとりが考えてほしいと思っています。


※この記事は、2019年度の授業内容を取材したものです。