管理栄養学科

栄養実験学

実験を通して
知識を実体験に変える。
そのワクワク感をチームで味わう。

たんぱく質の体内での働きを、実験を通して理解する

三大栄養素と聞いて何が思い浮かぶでしょうか。炭水化物・脂質・たんぱく質、この3つがそれにあたります。2年次の「基礎栄養学」ではそれらの栄養素が体内でどのように代謝されエネルギーや体の成分になるかを座学で学び、知識として理解します。しかしそれが体内でどんな化学反応を起こしているかは目に見えないため、イメージすることが困難。そこで栄養学実験では、食品たんぱく質の栄養価に焦点をあて、それが体にどのような影響を及ぼしているか実験を行って確認します。例えばたんぱく質には動物性と植物性があり、種類によって栄養価値が変わります。つまり、十分な量のたんぱく質を摂っているつもりでも、その種類や質に問題があれば体の成長や機能に支障が出てしまうのです。その過程を、実験を通して体感的に理解することがこの授業の目的です。

結果を予測し議論することで、論理的な思考力を養う

実験では「たんぱく質を全く含まない場合」「栄養価の高いたんぱく質を含む場合」「栄養価の低いたんぱく質を含む場合や、そこにアミノ酸を加えた場合」というように配合の異なる飼料をラットに与え、体重の増減や排泄物に含まれる成分などを調べます。大切なのは、実験前に結果を予測して仮説をたてること。例えば飼料によって体重にどう差が出るのかを考え、実験後はなぜその結果が出たかを考察します。もし予測と異なる数値が出たときは、数値が正しいか誤りかではなく、その数値が出た理由を考えるよう指導します。これは、感情や直感ではなく事実を積み上げて論理的にものごとを考えるトレーニングでもあります。このように仮説をたてて実験し、結果を考察する流れは、一般的な学生実験というより研究者が行う研究に近いやり方ですね。

グループ実験で行う役割分担は、就職後も役立つ

実験では教科書で理解したたんぱく質の役割を一つひとつ自分の手で確認することになるので、学生にはインパクトがあります。すべての実験で得られた数値は最終的にグループで集約し、総合的な結論を導き出していきます。始めに考えていた仮説と異なる実験結果が出ることもありますが、それをしっかり考察し議論するのがこの授業の特徴で、醍醐味。学生からはさまざまな感想が出ますが、身近なところでは「ダイエットのやり方が間違っていると気付いた」というものもありました。栄養素の本来の意味が理解できた証拠といえるでしょう。 この学科では管理栄養士を養成していますが、管理栄養士は医師や看護師とチームを組んで仕事をする機会の多い職業です。グループで実験を行うのもそのためで、相手に自分の考えを論理的に説明したり、複数で役割分担をしながらひとつのことに取り組んだりする経験は、就職後に生きると考えています。

生活科学部 管理栄養学科 大口 健司 教授

管理栄養士はチーム医療の一員。
常に考え続ける
「always think」の精神を持とう。

生活科学部 管理栄養学科 大口 健司 教授

人間の体は、非常に精巧にできています。教科書を読むと難しく感じるかもしれませんが、それはすべて自分の体の中で起きていること。たんぱく質の実験を通して「自分の体はすごいんだ」と気付いてほしいですね。だからこそ、文系・理系どちらの出身の学生にもわかりやすく、しかも高校では学ばない専門的な知識と有機化学の魅力にも触れながら、大学ならではのステップアップした学びが提供できるよう工夫しています。 管理栄養士のようにチーム医療の一員となる仕事では、相手が何を求めているかを常に想像し、自分にできることを考えて行動することが求められます。授業の実験でも同じで、ぼんやりしていてはだめ。いつも周囲に気を配ってフォローする姿勢が実験の成否につながります。まさに「always think」の精神ですね。これは私自身も常に意識していますし、学生にもそうあってほしいと願っています。

※この記事は、2019年度の授業内容を取材したものです。