人間関係学科

ソーシャルワーク演習Ⅰ

人を支援するためには
技術と熱意だけでなく
自分のことを深く
理解することが大切

相手を理解するために、まずは自分を知る

ソーシャルワークとは、福祉を必要とする人が最適なサービスにアクセスできるよう手助けをすることです。この授業の目的は主に3つ、支援する相手との関係構築に必要なコミュニケーション技術を修得すること、支援が必要となる背景の多様性を理解すること、そして、支援する立場である自分自身について知ることです。例えば、いじめには被害者と加害者の2つの立場が存在します。ソーシャルワーカーは被害者のケアだけでなく、いじめをした加害者の背景にも気を配る必要があります。相手の気持ちに寄り添うことは大切ですが、同情しすぎたり、個人的な感情に引っ張られてしまっては適切な判断ができません。そこで多様な社会背景を学ぶとともに、自分はどんな主義や価値観を持ち、何に心を動かされやすいかを自覚する「自己覚知」を行い、自分をコントロールしながら相手と関わることを学びます。

技術と客観性を身に付け、適切な支援を導き出す

授業では、さまざまなコミュニケーション技術を学ぶことからスタートします。言語のほか声や表情など非言語を用いたコミュニケーション方法、パーソナルスペース、質問の仕方や聴く技術などを駆使し、相手が話しやすい環境をいかに用意するか、ロールプレイで実践しながら学びます。その後、自己覚知では自分のライフストーリーを人生曲線やエコマップを使いながら自分の内面を問い直します。この作業は、ふだん人に見せない個人のプライベートな部分に踏み込むためかなりデリケート。しかし支援の現場では、明確な答えのないグレーゾーンにぶつかったとき、自分の価値観や感情で物事を判断しがちになります。そこに偏りがあると相手にストレスや不信感を与えることになるため、そうならないよう自分を客観視するための自己覚知は必要なプロセスなのです。

教員が学生一人ひとりと向き合い、きめ細かくフォロー

自分を知ることは、適切な進路の選択にもつながります。福祉職といっても、施設と社会福祉協議会などでは仕事内容や接する人々が異なります。学生のソーシャルワーカーへの夢や情熱、使命感、キャリアに対する迷いや不安を教員が丁寧に聴き、なぜその夢を描いたのかが自覚できるまで自分を理解し、自己覚知してほしいと思っています。授業ではまず教師である私自身が自己開示して信頼関係を構築しますが、積極的に発言できる学生もいれば、そうでない学生もいます。なので必要に応じて個別面談を繰り返し、一人ひとりきめ細かくフォローします。授業や面談自体がカウンセリングの場になっているといってもいいでしょう。そしてグループワークでは、クラスメイトを気遣い助け合うことも学んでほしいと思っています。自分で自分をケアする自助は大切ですが、仲間や友人との共助、そして私たち教員を含めた公助、すべてが大切なことを経験から学び、実践できるようになってほしいと願っています。

人間関係学部 人間関係学科 小榮住まゆ子 准教授

「あなたがいてくれてよかった」
そう言われるソーシャルワーカーになってほしい。

人間関係学部 人間関係学科 小榮住まゆ子 准教授

人間関係学科の社会福祉学分野では、私を含めた3人がチームとなって学生一人ひとりをフォローする体制をとっています。私は自己覚知のように内面をケアしますが、どんどん外の世界に連れ出してくれる先生もいます。役割の異なる教員がいることは、学生の成長に大きなメリットとなるでしょう。

人は、自分が安定していてはじめて人に優しくなれるもの。福祉職をめざす学生には、まず自分が自分のソーシャルワーカーとなり、バランスのとれた状態を維持してほしいと考えています。そして支援をした相手から「あなたがいてくれてよかった」と言われるようになってくれると嬉しいですね。就職してソーシャルワーカーとなってからも研究室を訪ねてくれる卒業生は多いです。専門的な話から仕事の悩みまでさまざまな話をしますが、やりがいを持って充実している姿を見ると頼もしく感じます。「椙山出身のワーカーはいい仕事をしてくれるね」と言ってくれる人が増えるよう、私も人材育成に力を入れていきます。

※この記事は、2019年度の授業内容を取材したものです。