心理学科

社会心理学特論

対人関係を
オリジナルの視点で据えた、
椙山だけで受講できる「特論」。

「心理的距離」に主眼を置いた最新の研究

相手を傷つけるつもりがないのに傷つけてしまった、という誰にでもあるような苦い経験。このような対人関係における現象を論理的に読み解き、解決策を探る学びが「社会心理学特論」です。「社会心理学概論」で学ぶ一般的な内容に対して、この「特論」で扱うのは担当教員の山根先生が研究を続けてきたオリジナルの学説。まさに、椙山女学園大学でしか受講できない授業です。

この研究の心理学的な位置づけは、臨床心理学ではなく社会心理学の一種。つまり、私たちの身近な現象が対象です。対人関係について、「心理的距離」という観点から解き明かすことをめざしています。たとえば今日の授業では、人と人の「心理的距離」を近づけるのに必要な力について考えました。その力のうちの一つが、魅力。「魅力という“惹きつける力”が働くから相手が接近してくる」という解説に、学生たちも自分の経験を思い浮かべて納得している様子です。

理論に基づき、学問としての解決策を探求

全15回ある「社会心理学特論」の前半では、個人と個人の心理的な距離を遠くしたり近くしたりするメカニズムを学びます。後半に入ると、対人関係においてトラブルの原因や解決のきっかけになるコミュニケーションのあり方について考えていきます。

山根先生の考えでは、対人関係のトラブルは、「心理的距離」の調整の不具合から生じる現象。つまり、学校でのいじめや嫁姑問題などの普遍的な課題は、お互いの「心理的距離」の調整がうまくいっていない状態であると分析することができます。授業では、こうしたメカニズムを読み解きながら、身近な課題に向き合っていきます。私たちの感情は、心のメカニズムの現れです。単なる実用的なテクニックではなく、理論に基づくノウハウを探求することが大切です。一人ひとりが置かれた現実の状況はそれぞれ異なり、一般論を当てはめることはできません。こうして個々のケースに対応するために、学問的な思考の獲得を目指します。

メカニズムを理解できれば、心に振り回されない

授業には中間レポートの提出があり、学生たちは自らが実際に経験した対人関係の分析を試みます。そのレポートで多く挙げられるのが、中学校や高校の友人グループ内でのもめごと。その時の対人関係を分析することは、気持ちを整理することにつながります。対人関係の本質を知れば、自分の置かれた状況を客観的に理解できるようになります。身近な課題に取り組んだり、自らの経験を題材にする「社会心理学特論」は、今日から日常生活に生かせる理論と実践を学ぶ授業なのです。

心理学の発展科目であるこの授業には、ベースとなる社会心理学の基礎的な理解が欠かせません。先行して「社会・集団・家族心理学A」の受講を推奨しているのはそのためです。なお、この授業で扱う理論は山根先生による最新の研究成果であるため、さらにこのテーマを突き詰めて学びたい場合は、「卒論事前ゼミ」などを通して卒業論文で自らの研究を進めていくことになります。

人間関係学部 心理学科 山根 一郎 教授

対人関係を見つめると、
人間が見えてくる。

人間関係学部 心理学科 山根 一郎 教授

心理学は、人間について考える学問です。そのため、心理学以外にも社会学や生物学の知識をふまえて、人の気持ちやコミュニケーションを理解していく必要があります。たとえば、対人関係は同種の個体間の関係であり、なぜお互いが関係しようとするのかについて生物学的な観点から考えなくてはなりません。つまり、心理学だけで人間は理解できないのです。「なぜ対人関係を学ぶのか」という理由は、そこにあります。対人関係の本質を見つめると、人間が見えてくるのです。私が研究している「心理的距離」という観点から見れば、皆さんが日常のなかで感じているさまざまなジレンマにも理由を見つけることができます。たとえば異性に思いを伝える、告白することになぜ躊躇してしまうのか。心のメカニズムにのっとって考えれば、きちんと説明できます。今、自分が置かれた状況を客観的に分析できる論理的思考を身につけ、対人関係に役立ててください。

※この記事は、2018年度の授業内容を取材したものです。