子ども発達学科

図画工作の指導法

造形活動や
鑑賞のプロセスを体験し、
子どもと教師
それぞれの視点から分析する。

幼児・初等教育における造形芸術の役割を知る

絵を描くことやものを創造することを通して、子どもたちの考える力や表現力・創造力を伸ばす『図画工作』。その学習活動のあり方や題材の選択、指導案の作成、評価の方法などを学ぶ演習授業が、『図画工作の指導法』です。『数学の指導法』『音楽の指導法』などの授業と並んで2年次(後期)に配置されています。図画工作による教育は、幼・保育園児から小学生までが対象のため、本学科の保育・初等教育専修、初等中等教育専修のどちらに所属する学生にとっても必要な学びです。

今日の授業は、小学生対象の「造形遊び」です。学生たちは今日までに集めた木の葉や石、木の実、それらの自然物と組み合わせる空き箱やシールなどを思い思いに持ち寄りました。これから、「自然物でオブジェをつくろう」をテーマにした図画工作の授業を子どもの立場でロールプレイングするのです。担当教員の磯部先生から授業の意味や狙いを一通り聞いたら、いよいよ演習のはじまりです。

自ら活動することで見えてくる表現の可能性

造形遊びでは、子どもたちが作品を完成させるまでのプロセスは2種類あります。一つは、素材で遊ぶうちにつくりたいイメージができる“行為からはじまる”パターン。もう一つは、つくりたいイメージがすでにあり、それを形にする“イメージ先行”パターンです。これまでの授業でその知識を得ている学生たちは、自分の工作がどちらに当たり、プロセスのどの段階に当たるのかを分析しながら制作に取り組みます。同時に、紙に貼るとコラージュ、ボンドで固めればオブジェになるなど、多彩な表現の可能性についても体験を通して学んでいきます。

その間、子どもたちの先生役としてサポートに当たる磯部先生が制作の方法を教えることはありません。参考作品を見せてヒントを与える、問いかけによって表現したいことを導くなど、子どもの考えを引き出して創造力を伸ばす指導に徹します。この演習は、さまざまな教育現場で研究を重ねる磯部先生の実践に触れる機会でもあるのです。

附属小学校での実践の映像が、生きた教材に

完成後は、作品を発表して鑑賞活動を行います。「どんな点を工夫したのか」「どやってイメージを形にしたのか」など、創作のプロセスを言語化して分析。子どもの発達にとって何が必要なのかを考えて、授業は終了します。次回の授業では、実際の子どもたちの様子を動画で鑑賞することになっています。映像教材は、磯部先生が椙山女学園大学附属小学校と連携して指導した「水のイメージを描こう」の授業記録。今度は教師の視点で客観的に観察し、分析結果をまとめていきます。

『図画工作の指導法』の学びの特色は、多様な表現活動を通して、①自ら体験する ②子どもたちの実際を映像で観察する ③分析して考えを整理する の流れを繰り返し、理解を深めていくことです。造形活動の意味を知る1年次の『図画工作』に続く授業であり、3年次の『ケースメソッド』や模擬授業、実習で役立つ基礎をつくる大切な学びとなっています。

教育学部 子ども発達学科 磯部 錦司 教授

子どもの理解を目的にした
学びのステップ

教育学部 子ども発達学科 磯部 錦司 教授

子ども発達学科では、『図画工作の指導法』の演習をさらに発展させて実践的に学ぶ授業を用意しています。それぞれの先生が専門性を生かし、3年次に配置されている少人数制の選択必修科目『ケースメソッド』です。私が担当するクラスは表現と文化を通じた活動です。夏休みを利用して、岐阜県の飛騨山中で行われる「子ども芸術村」、または、富山県五箇山の「利賀村アート・キャンプ」で子どもたちと二泊三日を過ごし、その活動を分析していきます。参加した学生は、引率やワークショップを担当することで理論と実践をつなぎ、指導力と教師や保育士に必要な人間的な魅力を身につけることをめざします。事前に指導案を作成することはもちろん、生活をともにすることで行動や作品づくりの観察を重ね、子どもの理解につなげる貴重な機会です。1年次の『図画工作』から、この3年次の『ケースメソッド』に渡る一連の授業は、子どもとの関わり方を学ぶことに主眼を置いています。なぜ造形活動が教育としてあるのか、教師や保育士は何を大切にするべきかを学んでいきましょう。※磯部錦司先生の「ケースメソッド(表現と文化)」は、日本高等教育開発協会 JAEDの Good Teaching Award(ベスト・ティーチャー賞、2016年)を受賞しました。

※この記事は、2018年度の授業内容を取材したものです。