心の専門家として、社会課題や法制度を知る

現代社会は母子・父子世帯、単独世帯、高齢者世帯など家族構成が多様化し、人と人とのつながりが希薄になっているといわれています。その分、地域でお互いが助け合う相互扶助の力も弱くなっているため、支援を行う者はそれを補うためにさまざまな法律や制度を知り、活用することが重要となります。心理職は人の内側にある心を扱う職業ですが、相手が何の問題に直面しているかを的確に捉え、どの制度のどんな支援に結び付けられるかを判断できなければ助けることができません。そして、医師・保健師・行政職員や学校関係者など、さまざまな職種の人と連携する仕事でもあります。それに対応するためこの授業では、他職種連携を行うために心理の専門家として必要な専門知識のほか、最低限知っておくべき社会課題や法制度について学んでいきます。

同世代の興味・関心から自分の視野を広げる

授業に参加する学生は、福祉にかかわるニュースの中から興味・関心のあるものを選び、授業の冒頭で自分はどう考えるかを交えながら発表します。子ども食堂や虐待の問題などテーマはさまざま。日頃からニュースに敏感になると同時に、クラスメイトの発表を通してさまざまなトピックスに触れることで視野が広がります。他にも、相対的貧困の状態にある子どもは学力レベルが下がり、自尊心が低くなる傾向があるのですが、それをフォローするために学生と同世代の大学生たちが学習支援を行っていることを紹介することもあります。ただ、認知症や引きこもり、虐待の現場などシビアな状況は、学生の日常生活からは伺い知ることが困難。そういうときは当事者のインタビュー映像などを活用し、臨場感をもって深刻な現場を感じられるように工夫しています。

法制度は、支援の裏付けとなる重要なもの

子ども食堂に代表されるように、今は民間の力が公的な福祉を補っている部分が多くあります。それは大切ですが、個人の力に依存するのは限界があるため、やはり行政が整備した制度による支援が基本。意外に見落としがちなのが、法律があって、制度ができて、そこに国の財源がついて支援が可能になるという事実です。公的な支援は、社会福祉法や児童福祉法などの法律が裏付けとなりできています。「障害児の学童保育」といわれる放課後等デイサービスも、法律の改正によって制度が整備され、生活の中に広がっていきました。逆に法制度が整備されていないということは、困ったときに助けてもらう手立てがないということです。さらに、制度があっても存在を知らなければ利用することもできません。それだけに、学生には制度にアクセスする方法を知ってもらいたいと考えています。今は「自分には関係ないこと」と感じても、将来子どもができたときや病気になったとき、この知識はきっと自分自身を助けてくれることでしょう。

人間関係学部 心理学科 鈴木 亮子 准教授

心理学は、形の見えない「心」について学ぶ学問。
漠然としていても、いつか必ず役立つときがくる。

人間関係学部 心理学科 鈴木 亮子 准教授

心理職の資格は今まで臨床心理士など民間資格のみでしたが、2017年に国家資格である公認心理師ができ、2018年に第一回の公認心理師試験が行われました。この授業は、その受験資格を得るために必要な授業のひとつです。そのため資格をめざす学生が多いですが、ここで学ぶ内容は社会の中で生きるために必要な知識。ぜひ多くの学生に興味を持ってもらい、制度をうまく利用すると同時に、支援がより充実するよう社会に働きかけていってほしいと思います。

心理学は「目に見えるもの」が身に付く学問ではありませんが、「心」は人が生まれてから死ぬまで持ち続けるもの。形はないけれど、ひとときも離れず身近にあるものです。心理学科の授業で学んだことは、今は漠然としていてもいつか必ず自分ごととして実感するときがくるでしょう。大学生活も、友人とたわいのない話をしたり、ぼーっと考え事をしたりする時間は自分の内面を育み、人生の糧となってくれます。そんな時間を大切にしながら、充実した4年間を過ごしてください。

※2019年度実施授業