演習のテーマは「現代若者論を読む」

演習Ⅰ(佐川担当)のテーマは「現代若者論を読む」。学校や若者というテーマを軸に、いじめ、スクールカースト、SNS、友だち関係など人間関係や若者文化に関するものを幅広くピックアップしています。履修する学生の興味を考慮しながら、近年広く読まれている教育社会学や教育学の分野の論文や書籍をセレクトし、一つの文献について時間をかけて読み込み、ディスカッションを重ねていきます。対象の年齢が学生と近いため、学生自身の今までの学校生活を振り返るような内容になることも多いです。授業の基本的な進め方は、教員が文献を解説した上で、20名ほどの学生が3〜4人のグループをつくり、その文献について、グループ内で共有します。次にグループで出てきた意見を板書し、全体で自由に感想や疑問を出し合っていきます。

ワークシートを通じたディスカッション

グループでの話し合いでは、A3サイズのワークシートを活用します。個々に配布されるワークシートは、自分の読書メモの欄(左半分)と他の学生の意見を記入する欄(右半分)で構成されています。学生は自分のメモをもとに発言し、また他の学生の発言の内容を書き取りながら、ディスカッションを進めていきます。ディスカッションと共有が終わった時点で、ワークシートには自分の意見とともに、他の学生の意見も記載され、一枚の紙の上で多様な考えが一望できるようになります。
例えば、スクールカーストに関するテーマのディスカッションでは、学生それぞれが通っていた学校での経験の違いでスクールカーストに対する理解が異なることがわかりします。文献の内容と学生の具体的な経験や考えを相互に参照する中で、「なぜスクールカーストが生じるのか」という問いに対する理解を深めることができます。ワークシートの活用は小さな工夫ではありますが、自分の考え方を相対化したり、視野を広げる上で役立つと考えています。

多様な考えに触れ、視野を広げる

もちろん演習では、文献に関する的確な読解を重視し、そこからは将来教育分野で働きたい人にとって、意義のある知見を得ることができます。ただここでは、専門的な知識の獲得にとどめず、対話から生れまる気付きや一緒に考えていく実感も大切にしています。人間関係学部の場合、多様な分野へ関心を持つ学生が多くいます。この学部の特徴をいかして、できる限り多様な考えに触れる中で、自分の価値観を問い直したり、あるいは別の生き方の可能性を見いだせるような場にすることを目指しています。文献を読み、他の学生の意見を聞いて「視野が広がった」「自分では思いつかない考えに触れることができた」といった声も聞くことができました。「文献を読む」という一見、地味な内容ですが、実際はアクティブな演習なのです。

人間関係学部 人間関係学科 佐川 佳之 准教授

多様な価値を
包括した社会には、
多くのメリットと人生が
生きやすくなる可能性がある。

人間関係学部 人間関係学科 佐川 佳之 准教授

価値を一元化することのリスクとは逆に、さまざまな価値を包括した社会にはたくさんのメリットがあります。多様な価値観が社会の中に存在し、自分が考えていた方法とは違うやり方を発見できる。そうすれば何か問題に突き当たっても、さまざまな方法や選択肢があることを思い出し、人生をもっと生きやすい方向にもっていくことができるかもしれません。多様性は人間関係学部の大きなテーマであり、椙山女学園大学の教育理念「人間になろう」にも通じます。なかには答えがないことに不安に感じる人がいるかもしれません。しかしこの大学に所属する教員は、多様な価値観を受け入れる姿勢を大切にしながら日々の教育活動にあたっています。それが学生に寄り添い、学生の思いを大切にする学風につながっているのでしょう。そんな私たちと共に、より良い社会のあり方について考えていきましょう。

※2019年度実施授業