生活環境デザイン学科

プロダクト制作実習B

社会に貢献する
デザインを実現する。
そのために必要な技術を身に付ける。

頭に浮かんだ形を「つくる」ための方法を学ぶ

デザイナー、特にプロダクトデザイナーは、形だけを考える職業ではありません。自分の考えた形をどうやって実現させるか、その「つくり方」が作品を左右します。そのためこの授業では、さまざまな素材を使い「つくり方の原理原則」を理解していきます。右の写真はそのうちのひとつ、複製の原理を学んでいるところです。自分の体の一部を使って雌型をつくり、材を流し込んで固まったら離型し、仕上げる。雌型に材が流れ込まない箇所があると注形ができません。それを実体験として経験し、自分の作品制作に応用できるようにしていきます。雌型を使った複製は、干菓子の型やプラスチック製品などあらゆる場面で使われる基本的な技術です。方法を知ることで身の回りの製品がどうやって製造されるかプロセスを想像するようになり、視野が広がっていきます。

基本を学びながら、自分で考える部分を徐々に増やす

授業は3部で構成しています。1部では名作として知られる椅子を忠実に模型として再現し、図面を読む力を養います。2部では金属とプラスチックのさまざまな加工法を学び、その技術を用いてオリジナルデザインを制作します。そして3部では、既存の技術の新しい使い方を見つける用途開発の課題に取り組みます。原理原則を学びながら、段階的に自由度が増していく構成になっているところが特長です。授業ではたまに失敗する学生もいますが、それはチャンス。なぜそうなったか、何がいけなかったかを考え、全員の教訓としていきます。学生たちはこの後に控える卒業制作で、学んだ技術を駆使して自分のつくりたい形を実現しなければなりません。そこには失敗や挫折もあります。授業中の失敗とその検証は、それを乗り越えるためのトレーニングとなります。

社会の中で、自分のデザインがどう使われるかを考える

新しいプロダクトデザインが登場する背後には、新しい材料と技術の開発があります。材質の科学的な性質を視野に入れながら、材料と加工法を工夫して従来にない形に挑戦する。そういった技術開発がデザイン開発を推し進めます。また、社会的要請に対してデザインがどう応えられるかも考慮に入れる必要があります。学生には造形の楽しさだけでなく、社会の中で自分のデザインがどう使われるかという視点も持ってもらいたい。そう考えて、在学中から学会で発表したり、さまざまなコンテストに応募したりする機会を設けています。身体機能の低下を補う自助具の分野では、学生が片手で化粧できるミニドレッサーなどを開発し、評価を受けました。これは女性ならではの視点が社会ニーズを発掘し、技術と結びついて実現にいたった事例といえるでしょう。

生活科学部 生活環境デザイン学科 滝本 成人 教授

誰もが見たことのある“材料”で、
誰も見たことのない“造形”を考える。

生活科学部 生活環境デザイン学科 滝本 成人 教授

プロダクトデザインでは、最初に直感的な力で完成形をイメージし、次にそれを実現するためのプロセスを考えます。そのためには、「つくり方」の引き出しをたくさん持っていることが必要。そしてその技術をどんな順番でどう組み合わせるか、論理的な思考力がポイントとなります。生活環境デザイン学科ではこの論理的な思考を育てることを重視しますが、それが芸術大学とは異なる、椙山女学園大学の武器だと思います。将来、デザイナーはもちろん、商品開発や技術営業の分野でものづくりの知識は不可欠ですし、そこに論理的な思考力が加わることで企画の実現性がアップします。私自身、「誰もが見たことのある“材料”で、誰も見たことのない“造形”を考える」ことをモットーとして、新しい素材を使ったクッションの研究や、これまでにない切れ味を実現する鍛造パン切包丁などの開発を進めてきました。形のバリエーションを追いかけるだけのデザインではなく、道具の力で社会貢献する。その意欲を持ってプロダクトデザインの勉強に取り組んでください。

※この記事は、2019年度の授業内容を取材したものです。